[対談] マチオモイ帖、はじまりのものがたり。

根っこでつながるマチオモイ

築山= 東京での展覧会を終え、いろんな町の人たちから「もっと広げよう」という声をもらって、これからの展開をいろいろ考えていっている最中なのですが、「マチオモイ帖」は横軸に広げていくだけのものではないような気がしています。町や人を深堀りして、根っこのところで日本各地の人とつながっていたい。

廣瀬= 二十代前半、ずっと全国を放浪していたんですが、その時にいつも感じていた、わくわく感や驚き、そして懐かしさをこの「マチオモイ帖」に感じています。なんとも言えないこの「経験」する作品を全国の皆さんと共有できるようなプロジェクトにしていきたいなぁ。

村上= 個人的なことですが、『しげい帖』を作った年の夏休みに、クリエイター仲間が「重井町に行ってみたい」と遊びにきてくれました。私自身も、「マチオモイ帖」を創ってくださった方の大切な町や家族を訪ねました。観光ガイドには載っていない“秘密の場所”を案内してもらったり、地域に伝わる手料理をご馳走になったり。とても温かい時間が流れて、「ああ、私、こういう気持ちを誰かに届けたくてコピーライターになったのかも」と思えたんですよね。

清水= 「マチオモイ帖」は根っこに帰る旅だと思っています。頭だけで完結してしまうクリエイションではなく、シンプルに「何かを人に伝える力が、自分にあること」を再確認する旅でもあるんでしょう。僕らクリエイターの特技は「見つけること」や「創ること」や「伝えること」。シンプルにそこに帰っていく時期なのかもしれません。日本各地のクリエイターが自分の足元を深堀りすることで、根っこでつながっていられるプロジェクトでありたいと思います。

堂野= そうですね。「マチオモイ帖」を通じて、さらに日本各地にクリエイターの仲間ができることは大事ですね。彼らは互いにライバルでもあるわけですから、知り合い、刺激し合い、競い合うことで、地域のクリエイティブビジネスがたくましい力を蓄え、世界にも通じる競争力を生み出す原動力になるのではと思っています。

(2012年3月)

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