[対談] マチオモイ帖、はじまりのものがたり。

34組のマチオモイ帖

村上= 「マチオモイ帖」という名前は、企画書を作る段階で生まれました。「町興し」は一朝一夕には出来ないけど、「町を思うこと」なら誰にでもできる。そんな思いを込めて「マチオモイ帖」。

築山= わかりやすいネーミングでしたので、クリエイターに声をかける段階でも意図が伝わりやすかったんです。「マチオモイ帖」のルールは、生まれた町や大切に思っている「町」を選んで、クリエイターが個人の責任編集で一冊まるごと創りあげるというもの。テーマをとことん「自分事」に出来るし、「自分事」にしなきゃ創れません。第一線で突っ走ってきたクリエイターたちが、ふと足を止めて、自分の軌跡を振り返る時間を持ってくださいましたね。

清水= 出来上がった1冊1冊それぞれが、本当に心に届いてきたことには驚きましたね。それだけは、企画段階で想像できなかったことです。

築山= そこは、それぞれプロとしての経験でしょうね。

清水= 自由演技のちょうどいいルールがあったんですよ、きっと。

築山= 肩のチカラを抜いてるけど、手は抜けなかったという感じ。メビック扇町での「マチオモイ帖」展覧会では34冊を展示しましたが、1冊1冊に思いがぎゅっと詰まっていましたね。

堂野= 実は、メビック扇町に「マチオモイ帖」がずらっと並んだ時、感動したんですよ。なんと面白くて、あったかい企画だろうって。僕は大阪の郊外で生まれ育ちました。村上さんの実家と変わらないぐらいに古いしきたりが残っている地域。でも、大阪市内への通勤圏内でもあるから、僕は地元に関わらないまま今日まで来ました。同級生たちは消防団で活動したり、地元の祭を手伝ったりしているのにね。「マチオモイ帖」は、そんな個人的な後ろめたさや、後回しにしてきた大切なものの存在をストレートに突きつけらました。