[対談] マチオモイ帖、はじまりのものがたり。

クリエイターが社会に対してできること

村上= そんなタイミングで、清水さんからメビック扇町での展覧会『Social Propose ークリエイターが社会に対してできることー』のお話をいただきました。

築山= いろんな社会の課題からテーマを選んで、クリエイターがさまざまな課題解決に対しての提案をする企画でしたね。清水さんは、早い段階からソーシャル・デザインに取り組まれている印象があるんですが、きっかけは?

清水= 僕は、20代前半にアメリカのデザイナー、ヴィクター・パパネックの書いた『生きのびるためのデザイン』という本にとても感銘を受けました。簡単に言うとデザインは本来、人類や社会全体に対して役割を持つものであるという内容で、貧困や環境、身障者の問題など、あらゆるものにデザインが役立つことを学びました。ただ、当時はまだバブルの時代。まわりの人は誰もピンと来ていませんでしたね(笑)。経済が中心だった時代から昨今は「ソーシャルの時代」と言われていますけど、誰もが本来のデザインのあり方に気付きはじめただけ。ごく自然な流れだと思いますよ。いずれ、「ソーシャル」という言葉をわざわざ使わなくてもなくても、デザインが社会のためになされるものになるといいなと考えています。

村上= 数ある社会問題の中で、クリエイターとして取り組めるものは何か。当初、よくわからなかったんですが、目を背けてはいけない課題のように感じました。

清水= それで、村上さんとアイデアを出し合っているときに『しげい帖』を見せてもらったんです。直感で「これでいける!」と思いました。これを大勢のクリエイターで作れば面白くなる、と!

村上= 私は、その時点ではポカ~ン(笑)。田舎生まれのクリエイターばかりじゃないし。この企画が、都会の方にどう伝わっていくのか想像できませんでした。改めて『しげい帖』のどこが良かったんでしょう?

清水= ピンポイントな視点です。「どんな人でも持っているもの」であり、「その人にしか生み出せない価値」がそこにある。この方法で地域を「点」でつなげていけば、新しい日本地図が観えてくると確信したんです。

築山= 私も直感で「いける!」と思いましたよ!そこから急ピッチで企画書を作って、周りのクリエイターに声をかけていきました。