- わたしのマチオモイ帖制作委員会メンバー
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最初の1帖から34帖、340帖、そして1,500帖と展覧会を重ねて作品が増えていくことで見えてくるふたつの愛おしい景色があります。ひとつはさまざまな思い、想い、憶い、念いと共に、作者だけの時間を自由に旅してきた景色。その無数にあるオモイは決して色褪せることはなく、共感や感動を生みだす源泉です。もうひとつは、作品数が増えていくごとに展覧会全体から伝わってくる、各地の人の営みや見えない繋がり。今わたしたちが暮らすこの日本の輪郭がぼんやりと立ち上がってくるような景色です。瀬戸内の島で暮らす父や母のことが気になってしかたありません。大好きな島のみかんの丘やスイカ畑が過去の風景になるのは悲しいです。隣の家のおばあちゃんや犬がいなくなるのも嫌です。でも、時間は流れ、フェリーはいつも容赦なく島を離れます。大阪で暮らす私には思うばかりで何もできず、もやもやとした思いが何年も続いていました。で、その、自分だけのもやもやをまとめたのが『しげい帖』でした。で、「マチオモイ帖」は、日本各地のクリエイターが自分だけのもやもやを密かに告白しています。ガイドブックにないってのはソコです。知らない町の人が書いてることなのに、なぜか心の深いところで共振して「あ、私も!」「おお、オレも!」ってなるんです。読み終わった人も、もやもやします。もやもやして何か、その霧を晴らしたくなるような気持ちに駆り立てられます。それで、ちょっとオヤジの声でも聞いてみるか、とか、ゆっくり町を歩いてみようかな、となったりします。ささやかですがそんなことが大事だよねー、と、うなづき合える友だちが日本各地で増えていきます。ってことは、うちの田舎の両親も、今ごろどこかの誰かにやさしくしてもらってるかも。マチオモイはそんなふうに島国・日本をまあるくつなぐ地図なのかもしれません。
わたしのマチオモイ帖作品
□しげい帖(BOOK2011)
□さかまち帖(BOOK2013)
□センニチマエ1帖(BOOK2015)
□しげい帖#重井中69期生のしまおもい(BOOK2016)「定期を持ったことがない」が自慢なくらい、生まれ育った町半径数キロ以内から、学生時代〜はじめての就職先、そして今に至るまでほぼ移動していない都会っ子のわたしは、マチオモイ帖に携わるまで、いや携わってからも、なかなか “マチオモイな想い”に駆られることはありませんでした。ただ、マチオモイ帖を作った方たちからその後のお話を聞くことにとても興味を持ち、サロンなどを通して、その出来事や変化をうかがうことが楽しくてたまらなくなったのです。そして自分でたった一枚ポストカードを作ってみたことで、作った方の気持ちをほわんと感じることができました。自分と向き合う時間を作ってみる、自分に素直に向き合ってみる、そんな時間を、普段クライアントのために忙殺されているクリエイターのみなさんに作ってほしい、そうすればきっと心に何かが生まれるはず、と信じています。
わたしのマチオモイ帖作品
□上町帖(POSTCARD2016)最初は一出展者だったはずが、いつのまにか制作委員の一員としてガッツリ関わるようになり、今では自分にとって欠かせない取り組みとなった「わたしのマチオモイ帖」。展覧会の会場構成を担当する他、町歩きと本づくりを組み合わせたワークショップ「マチオモイあるき」を企画し、これまで各地で開催してきました。古びたお店の看板、誰かが落とした片方だけの手袋、空き地に咲く白い花…一見何の変哲もない町でも目を凝らしてみると、そこにはたくさんの「気になるもの」があります。このお店はいつからあって、どんな人が営んでいるのだろう?もう片方の手袋は今も持ち主の手元にあるの?この花はだれかが植えたもの?それとも風に乗ってどこか遠くからやってきたのかしら?そんなふうに想像の羽根を広げていけば、いつもとは違う町の風景が見えてきます。自らの「気になる」に従ってみる。「わたしのマチオモイ」を探す旅は、そこから始まるのかもしれません。
わたしのマチオモイ帖作品
□ならまち帖(MOVIE2012)
□しもみかど帖(BOOK2014)他
数年前につくったマチオモイ帖(ムービー部門)。友人たちと一緒に作る過程の中で「マチオモイ」な言葉がたくさん聞けた気がしています。本人たちにその意識はなくてもそれはきっと「マチオモイ」で、マチオモイ帖を作る機会があったからこそ出てきたもの。クリエイターとしてつくる過程を通してつくれたものになんだかとってもグッときたことを今でも覚えています。つくる過程でつくられるもの、もマチオモイ。あ、世の中はきっとマチオモイだらけ!なのかも。
わたしのマチオモイ帖作品
□山田町東下西と坂本帖(ムービー部門)ふるさと新宮は帰る場所だけど、決して逃げる場所でははない。そう言い聞かせて、田舎を遠く離れ、都会に通用する為に懸命に働いて来た18年。絶えず、いつも消すことのできなかった故郷に募る想い。そんな中、マチオモイ帖でムービー部門があることを知りました。ずっと構想し、自分で撮ってみたかった新宮映像。地元に残ってデザインをしている友人、福本友樹氏に相談し、やっと形に出来たのが「マチオモイムービー新宮帖1」このマチオモイ帖作りで、出会ったのは、かけがえのない仲間と、今まで想像もしなかった価値観。クリエイティブ活動で、地域社会に貢献できることを見つめる良い機会ともなりました。オモイは形にすることで、誰かに届くし、つながる。実は思うことって、人生の中で何よりも純粋で、高尚で、頼りになることなのではないか?と、感じています。ふるさと新宮よ永遠に。今の平和なマチであり続けて欲しい。同じく、隣り町、ご近所町にもそんな思いを込めて。
わたしのマチオモイ帖作品
□新宮帖1~5(ムービー部門)「マチオモイ」って、何となくふわふわしていて掴みどころが無い。どうカタチにすれば良いの?クリエイターとしてちゃんとした作品をつくらねば!と身構える方も多いと思います。だけど、実はつくるまでのプロセスが大切だったり。ボク自身もこれまで幾つかの『マチオモイ帖』をつくってきましたが、そう実感しています。作品をつくる過程で、これまで大切な時間を重ねて来た町へ思いを馳せたり、自分の中にある記憶を実際に辿ってみたり。中には甘酸っぱい経験や苦く辛い思い出などもあったり。そんな記憶を辿る機会って意外と日常に無かったりするんですよね。自分がこれまでの時間をどう過ごしてきてどんな経験を積み重ねてきたのか、そして、そこにこの町がどう関わっていたのかなど。この『マチオモイ帖』って、そんな自分のルーツに触れるキッカケをくれたりするんですよね。誰の中にもある記憶のカタチ。それがマチオモイなのかなと。
わたしのマチオモイ帖作品
□浪花帖 -いろはかるた-(大阪/2013/BOOK)
□浪花帖 -すごろくさんぽ-(大阪/2014/BOOK)
□播磨帖 -ある日の朝の散歩道-(大阪/2015/BOOK)
□播磨帖 -ボクの住んでる大好きな町-(大阪/2017/BOOK)
□カナヤマカミ帖 (熊本/2016/POST CARD)マチオモイは誰もが持っている。重いようで軽い、軽いようで重い、時に温かく、時に冷たく厳しく。ふわふわしているようでカチカチな不思議なカタチをしている。誰かのマチオモイ帖を開けば、誰かの記憶や体験を疑似体験。同じマチでも体験が違えば全く違う景色にしてくれる。デザイナーとして「マチオモイ」と向き合った時、なんとなく過ごしていた毎日や、頑張った時、辛かった時もひっくるめて自分だけが体験した場所や時間という人生の記録を確かめながら振り返ることで見えてくる新しい発見や出会いをもたらしてくれる事がマチオモイの素敵なところだなと思います。
わたしのマチオモイ帖作品
□川面帖(宝塚)
□北昭和町(兵庫)
□NY帖(アメリカ)